2005年7月22日 富士登山競走
6合目から7合目へ向かう砂地。結局今年はここがネックになってしまった。
スタート後4時間経過。真上に見える8合目の関門は閉ざされてしまった。(白雲荘のさらに上に見える本八合が関門)
「こころに残るあのレース」コーナーを設けたのは何年前だったろうか?
もちろん現在の私の自慢のひとつである富士登山競争も「こころに残る」レースの筆頭であるが、何しろ完走した当時は走りながら写真を撮ろうという考えもなければ余裕もなかった。完走してから何年か後に、このコーナーを立ち上げるにあたり、トレーニング中に五合目までの写真を撮り、アップしてから、いつかは五合目から山頂までの写真を掲載したいと想い続けていた。しかし、富士登山競走とは1999年7月25日に五合目関門に引っかかって以来、もう縁の無いレースだと諦めていた。
しかし転機は突然やってきた。
きっかけのひとつは、47都道府県フルマラソン制覇が終盤を迎え、来年11月の大田原マラソンがそのフィナーレを飾るレースになったこと。栃木県という地味な(失礼!)県が最後になったことはやや残念だが、しかしこのレースは制限時間が4時間と、今の私には一生懸命走らなければならないレースだ。初心に返り真面目にスピードトレーニングを始めようと心に決めたところだった。
もうひとつのきっかけは、海外マラソンを調べていたときのこと。当初は海外のフルマラソンを走ろうと思っていたが、これまでに参加したのはニュージーランドのケプラーチャレンジとスイスのアルペンマラソン。いずれも普通のマラソンとは言いがたい山岳コースだ。2005年はアメリカで適当なレースはないかと調査していたが、どうせ海外に出かけるなら普通のマラソンではつまらないなと考えている自分を発見したのである。そんなとき目に飛び込んできたのがデンバー近郊のコロラドスプリングスで開催される「パイクスピークマラソン」。4300mの山頂を目指すレースだ。残念ながら超人気のあるレースで、2005年の申込みは終了していた。来年はぜひ参加したいと思ってはみたが、果たして今の自分に4300mまで行ける体力はあるのだろうか?との疑問が沸いてきた。アメリカまで出かけたのにリタイヤしてはもったいない。厳しいトレーニングをつんで臨もうではないかと心に決めた。
少々長くなったが、以上2つのニーズから来年の7月8月に向けて、スピードと山岳トレーニングとを行おう。初心に返り、しかし無理はせず、少しずつ基本的な走力を鍛え直そう!と誓ったのが今年の6月のことであった。スピードと山岳とは矛盾するような気もするが、経験的に平地のスピードがつけば、登り坂を押し切る脚力もつくというのが実感だ。
そんな訳で、今年は思い切って富士登山競走にエントリーしてしまった。
とにかく富士山でトレーニングしようと、6月に一度、富士吉田駅から7合目まで走ってみた。最近ウルトラに励んで(?)いることもあり、時間をかければ、しぶとく進むことはできる。しかし、以前はそれほど感じなかった6合目から7合目の砂地が非常に辛く、思うように前に進まない。結局ここの砂地と、7合目の岩場以降の砂地が大いにネックになってしまった。
以前富士山を走っていたときは、早朝に自宅から車で富士吉田へ向かっていたが、数年前から車を手放してしまった私は、河口湖に宿をとった。宿をとったといっても、レースは金曜日。前日の木曜日も休むわけには行かず、会社が終わってから電車で河口湖に向かったため、宿に着いたのときは夜10時を回っていた。部屋に入ると既に真っ暗で、4人のランナーは明日に備えて休息をとっていた。
朝5時に朝食。5時40分ころにマイクロバスで富士吉田市役所へ出発。
6時には1時間半後に迫ったスタートを、久々に緊張感を楽しんで待つ状態にあった。
今回の目標は8合目の関門。制限時間は4時間である。結局トレーニングでは1度しか富士山を走ることはできず、5合目以降の砂地と岩場は不安だらけ。よもやこの状態で8合目の関門をクリアできるとは思わないが(逆に簡単にクリアできてしまうようなら、多くのランナーが大目標でするレースとはなりえないだろう)、とにかく4時間半、前へ前へと進もう。
中の茶屋、馬返しまでのロードは、だらだらと走ると余計に疲れる。思い切って弾むように走り、そのスピードに慣れてしまおう、との作戦は成功。馬返しを超えても驚くほど余裕が残っていた。今回の参加者は3000人近い。しかもランナー全体の中で時間的にボリュームゾーンにあたってしまったのか、渋滞にはまってしまう。しかし、事前トレーニングのときも感じたが、以前はシングルトラックだった五合目までの道はきれいに整備されており、前のランナーを追い越すことが容易な環境になっていた。
五合目の関門をクリアしたのは制限時間の12分前。
我ながら頑張っていると関心しながら、ついに6合目からの砂地に突入。脚の踏ん張りがきかず、なかなか前に進まない。この砂地は足首の返しだけに頼る小手先(小脚先?)の走りではごまかせない。大地を、太ももからぐぐっと押し込めるような力強さが必要だ。でもこれができない。結局は基本的な脚力不足ということだろう。
そのかわり、7合目からの岩場は比較的順調に進んだ。脚の踏ん張りが利いたこと、後ろのランナーにあおられて、いやでも前に進まざるを得なかったこともあるが、ひょっとしたら8合目の関門をクリアできるのではないかと錯覚を起こすほど頑張っている自分に酔っていた。
しかし、富士山はそれほど甘くない。
岩場を過ぎ、再び砂地が始まった。6合目であえいだ道よりさらに厳しい砂だ。「もうすぐ8合目!」との掛け声がかかる。制限時間まであと10分ほど。あの小屋には行ける!と思うがしかし、その小屋は関門ではない。富士山の8合目は非常に長い。どこまで行っても8合目が続くのだ。真上に見える本当の8合目(関門)は、果てしなく遠く、ついに4時間を回ってしまった。それでも関門までは行こう。
そして8合目の関門は明日からの新しいチャレンジにつながっていく。