只見駅へ向かうJR只見線からの風景。

桧枝岐に近づくにつれ、スノーシェッドが目立つようになる。

 

スノーシェッドの切れ目から見る風景。走っていないと見れない景色だ。

桧枝岐・駒の湯。ここの露天風呂はまさに紅葉を独り占め。何とも贅沢な休日。

 

2005年11月3日 JR只見駅~さゆり温泉 (約25km)
2005年11月4日 さゆり温泉~桧枝岐・駒の湯 (約35km)

2005年は、100km4本、47都道府県制覇は5県クリア(11月14日現在)、富士登山競走再チャレンジなど、実に稔りの多い1年になった。11月27日に香川県での瀬戸内海タートル・フルマラソンを残すものの、ちょっと一息ついて紅葉を楽しみながらの温泉旅行へ行こう。もちろん、温泉を何倍も楽しむためには、そこまで走っていくのが一番。温泉と紅葉とマラニックを満喫でき、かつ、前々から行ってみたかった絶好の場所が桧枝岐だ。

桧枝岐は福島県南部の南会津(奥会津とも呼ぶらしい)の一番奥。新潟・群馬・福島の三県境にまたがる観光地・尾瀬から向かった方が近いという位置取り。今回は会津若松を起点としたのだが、実に遠かった。何しろ、会津若松から走り始めのJR只見線只見駅まで普通列車で3時間もかかり、同じ福島県内の移動とは思えない。しかも、会津発只見行の列車は1日3本。会津を朝6時に出なければ明るいうちに走り出せないという恐ろしさ。

ともあれ、1日目の9時に只見駅から走り始める。駅近くの商店でパンを買い込む。出発時、会津若松駅のコンビニはまだ閉まっており、このまま食料が調達できなかったらどうしようと思っていただけにありがたい商店だった。しかし走り始めてわかったが、国道289号にぽつんぽつんと存在する集落にはちゃんと商店があり(失礼!)、只見駅で慌てて買い込まなくても問題なかったようだ。

関東では今年は10月でも「暑い」と思うような日も多く、紅葉の気配もなかったが、さすがにここまで来ると山々は色づいている。今日の目的地は、南郷村のさゆり温泉。しかし、そこまでの風景は意外なほど開けており、紅葉の山はちょっと離れたところから、ひとり走っている旅人を珍しそうに見守ってくれている。只見駅からさゆり温泉までは約25km。鉄道ダイヤの関係で9時に走り始めた私は、1時には温泉に着いてしまった。本来チェックインは3時なのだが、そこはやさしい旅の宿、早めに温泉に入れさせてもらった。湯船の窓には紅葉が広がっている。入浴客はただひとり。正に最高の贅沢。

翌日、いよいよ桧枝岐を目指す35kmの行程。しかしまあ、桧枝岐を17時発のバスで会津若松に戻ればよいので、気楽に構えていたのだが、ここでアクシデント。会津では11月からバスダイヤが大きく変わってしまう。桧枝岐の最終バスはなんと15時10分。7時半からの朝食を急いでかきこみ、8時ちょい過ぎには走り始めていた。

途中、伊南村内川までは昨日と同じ風景が続いていたが、ここを越えると一変。雪避けのスノーシェッドを頻繁にくぐるようになる。スノーシェッドといっても、進めば進むほど距離は延び、ほとんどトンネルに近い。とはいえ歩道はきちんとついているので、走るには支障がない。人の気配が無くなり、雰囲気はどんどんさびしくなるが、その分紅葉は美しい。空からちらちらと落ちてくるものは、ゆ、雪ではないか。でもOK。道が寂しいほど、気温が低いほど、温泉の楽しみは高まる。

桧枝岐集落の数キロ手前。最後の長い長いスノーシェッドを越えると、最近作られたと思われる「アルザ尾瀬の湯」が出現。その周囲にはいかにも観光地と思われる建物が集まっていた。しかし、私の目的地はここではない。あと一分張り、本当の集落にある「駒の湯」を目指そう。結果的に時間はまだ十分。バスに乗るまで2時間はたっぷりある。

最終目的地・駒の湯。
桧枝岐の集落は、「山奥」を感じさせない普通の街だったが、駒の湯も勝手に想像していた「黒光りする板張りの湯船」とはかけ離れた明るい露天風呂だった。とはいえ、まわりの景色は最高。走りの疲れを癒す露天風呂。そして目の前に広がる紅葉。狙い通りの走り旅はちょっとずるいくらい。癖になりそうな桧枝岐。