2003年9月27日 弘前・白神アップルマラソン

スタート直後とゴール直前に走るコース。雄大な岩木山が見守ってくれる。

緑の中に赤く見えるのは、もちろんリンゴ。コース半ばに見られる楽しい風景。

 

JR弘前駅前から主催者が準備したバスで約15分。隣駅「撫牛子(ないじょうし)」の方が近いと思われる弘前市加藤川河川敷運動広場がメイン会場。スタート後、岩木山を仰ぎながら一路西へ向かい、ハーフマラソンのゴールでもある中津軽郡西目屋を折り返し、再び河川敷広場に戻る完全な1往復コース。

日本全国47都道府県マラソン制覇を目指す旅人にとって鬼門となる県がいくつかある。その中のひとつがこの青森県だった。実はこのレースを走る直前の達成県数は33で、そろそろどの県が最後まで残ってしまうか、残ってしまった県はどうやってクリアしようか、と余計な心配をし始めた今年の5月のことだった。毎日膨大なメールが送られてくるウルトラマラソンのメーリングリストを眺めているとき、「青森県初のフルマラソン開催が決定された」とのメールが目に飛び込んできた!

9月27日の土曜日に開催されるらしい。というところまではわかったが、それ以上詳細な情報はなかなかオープンにならず、ひょっとしたらガセネタか?土曜日開催というのがうそっぽい?などどやきもきする日々を過ごしていたのだが、ようやく申込用紙を入手した私はためらわずに参加を決めた。

しかし、9月下旬はウルトラマラソンの開催集中時期でもある。
前々から走りたかった「玄海100km」はこの1週前に開催され、しかも全日空の特割で安く行けるという絶好の設定だったため、是非とも玄海を走りたい。しかし、青森初のフルマラソンにも参加したい。悩んだあげく、「両方走ってしまおう」という無謀な結論を導き出したのであった。

中1週間。正確には玄海は21日で青森が27日なので「中5日」。
フルマラソンでさえ挑戦したことのない世界に突入することとなった。
「玄海」を何とか完走した私は、まだ筋肉痛が引ききれていない状態で弘前へ向かったのだが、心配はふたつ。ひとつめは、「走り出しはいいが、どこかでぱたっとガス欠状態にならないだよろうか?」というもっともな不安。もうひとつは、「大会会場まではバスが出るが、帰りのバスはちゃんとあるのだろうか?」という不安。

ひとつめの不安は、結論から言うと杞憂であった。
スタート直後こそランナーがごちゃついたが、200mほど先の交差点を左に曲がると、正面に岩木山が構える道が完全解放されており、すぐにマイペースで走ることができた。しかも、完全に交通規制された道はここだけではなかった。途中数kmが片側規制になるだけで、それ以外はすべて前面通行止めにしてくれていた。しかも、交差点ではランナーの通過にあわせて車両を止めてくれたため、全く車を気にしないですんだ。さらにさらに、このコースはほぼ平坦である。西目屋近くで軽いアップダウンがあるものの、それが逆にリズムを取りやすく演出してくれる程度であった。
まとめると、この大会は私が参加した中で、最も走りやすいコースだと言える。

走りながら何人かのランナーと話をする機会があったが、このレースの前の週は秋田で田沢湖マラソンが開催されたのだが、田沢湖と青森を連闘するランナーが結構多いようだ。私でさえ、ひと月に2回のフルマラソンに参加するまでには結構勇気が必要となったが、今や連闘するくらいはあたりまえの世の中になったようだ。

走りやすいこのレースの問題点をあえて探すとすれば、走りやすすぎて休みを入れられないことと、給水所には水・スポーツドリンクの他はバナナがあるだけで、ちょっと物足りなかったことくらい。おかげで100kmを走ったばかりの身でも快調に走り続けることが出来た。最後までほとんどペースが落ちなかったフルマラソンも初めてと言ってよいだろう。

さてその分の反動として、ふたつめの不安が現実となって現れた。
会場から弘前駅まで戻るバスは16時に出るということだ。その後15時半にも出るとの情報を得たが、9時20分がスタートのこのレース、私の帰り仕度がすんだ時点でまだ14時を少しまわったところであった。「15時半から景品の抽選会があるので、楽しんでいって下さい。」と言われたものの、抽選には自信を持って絶対当たらない私にとって苦痛以外の何ものでもない。まして、せっかく岩木山の麓に来たのだから、岩木山神社と温泉には行きたい。しかも、この日の夜のフライトで羽田に戻る予定だった私にとって15時半まで会場にいる余裕は無い!

と言っても、路線バスも無さそうだし、歩いて帰るには遠い。走ってもよいのだが、荷物が大きい。
実はこれと同じ経験を以前したことがある。宮城県での東北ブロックマラソンと岩手県で走ったハーフマラソンのときだ。いずれのレースも会場は駅から遠く、しかもバスの便は極めて悪かった。宮城では結局公衆電話でタクシーを呼んで駅まで行ってもらった記憶がある。そういえばこの3件はすべて東北だ。もしかしたら東北地方は車での移動が当たり前すぎて、車以外のランナーのことは全く考慮されていないのではないだろうか?

途方に暮れてあたりを見回すと、何と数台のタクシーが客待ちをしているではないか!
ここから岩木山神社まで行くと4000円近くかかるが、もうこれ以外の選択肢はなかった。
結論から言えばこれが正解。神社までの約30分、リンゴの育て方や、津軽藩と徳川家康との関係など面白い話を聞かせてくれた。きれいでゆっくり休める温泉に行きたいとリクエストすると、国民宿舎いわき荘に連れて行ってくれた。これも正解。500円で露天風呂あり、横になれる休憩所ありで、十分リラックスできた。帰りは路線バスが弘前駅まで出ている。このバスが1時間に1本なので注意が必要だが、充分満足のいくものだった。

願わくば、大会主催者がレース後の温泉を準備してくれれば、すべての面で一番の大会になると思うのだが。。。