2006年10月8日 第42回御嶽マラソン

鈴蘭スカイラインを走る。ガスが多く、景色を楽しめなかったのが残念。

ゴール間近。もはや紅葉が美しい標高1700m。

 

岐阜県内の高山本線・飛騨小坂駅下車。徒歩5分ほどにある振興事務所前が受付兼スタート地点。
標高523mのここから一路御嶽山中腹の濁河温泉を目指す。濁河温泉の標高は1708.4mなので、高低差は実に1185.4m。距離は42.195km。これを5時間の制限時間で駆け上がるのだから、かなり厳しい。しかし、個人の荷物は濁河温泉まで輸送してくれるし、ゴール後は温泉、お弁当が待っており、その後はバスでスタート地点まで送ってくれる。正に至れり尽くせりのレース。

「日本一ハードな山岳マラソン」の名に誘われて、いつか走りたいと思っていたレース。今年は11月23日の大田原マラソンを目標にしているが、そのトレーニングとして参加することにした。しかし、7月中旬に痛めた左ふくらはぎは依然完治しておらず、6分/kmがいいところという体調。まあ、5時間制限だから何とかなるだろうと考えていたのだが、これが実に甘かった。

レース前の一週間。台風の接近に刺激された秋雨前線が大暴れして各地に大雨をもたらしたが、その週末にあたる本レース日をはさんだ3連休はからっと晴れるはずだった。10月7日、岐阜の街は文字通りからっとした秋晴れだったのだが、高山本線に揺られているうちに雲行きが怪しくなってきた。高山は完全に雨。ホテルで見た天気予報では翌日レース日は回復に向かうはずなのだが、レース当日朝の高山は結構激しい雨が降り続いていた。

朝、高山駅6時40分発の列車で飛騨小坂駅へ。
小坂に到着したときには止んでいた雨は、スタート時間(8時半)がせまると再び降り始めた。結局レース前半は降ったり止んだり。後半は時折陽が射すという天気だったので、昨日の天気予報は当たったということだろう。しかし、予想外だったのはレースのペース。高低差1200mのフルマラソンだから、スタートはウルトラ並みのペースだろうと思い込んでいたが、号砲直後から何というハイペース!

ふくらはぎをかばいつつ、調子が出るまではゆっくりペースで。
という考えを大幅修正せざるをえなかった。参加者300名程度のこのレースではもたもたしているとあっという間に最後尾になってしまいそう。もはやふくらはぎを心配している場合ではなさそうだ。前述のように最近は6分/kmペースに慣れていたので、5kmも走らないうちに、脚が痛くなるどころか呼吸が苦しくなる有様。

しかし、なぜみんなこんなに速いのだろう。こんなペースでフルマラソンが持つのだろうか?
と不安に思っていたが、レースが15kmを過ぎて合点がいった。見る見る勾配が急になっていき、ペースダウンを余儀なくされたのだ。15kmから25km付近まで続く登りが第一のふんばりどころ。走ったり歩いたりの繰り返しで、脚にはきついがペースを上げることはできない状態。登り坂までにタイムを稼いでおこうという意識がスタート直後からのハイペースを生んだのであろう。

25kmから30kmまでは下り。
ほっとしたものの、今朝もらったパンフレットによると30kmからフィニッシュまでは前半よりもきつい登りが待っているのだ。30kmを通過して残り時間は1時間40分。残り12kmがパンフレット通りの登り坂だったらとても時間内にゴールできなかっただろう。気持ちの中ではほとんど完走をあきらめていたくらいだった。しかし、ここからが高低図ではわからない実際のコースの不思議なところ。30kmから登りになるはずが、35kmまではときどき登りがあるものの、ほぼ平坦なコースが続いてくれた。こんなに楽をしたら35km以降は地獄になるのではないか?

しかし不思議なことに35km以降も、苦しい登り区間はあるものの、時折下り坂も混じっており、15~25kmの苦しさの半分以下という実感。とはいえ、標高は確実に上がっているのだろう、結構寒い。指先はかじかんできた。鼻水もたれ始めたところであと3km表示。ここにきて勾配がややゆるやかになった。このままゴールへまっしぐら。と思いきや、残り2kmが妙に長い。残り3km地点では4時間40分台でゴールできそうな勢いだったが、結局は制限時間の8分前でフィニッシュ。35km以降のどこかで気を抜いていたら制限時間に引っかかっていたかもしれない。

ゴールの真正面には青少年の家があり、そのまま温泉に浸かれる。
スタート時に預けた荷物を受け取り、いざ温泉へ。
指がかじかんでいるため、着替えに妙に時間がかかったが、湯船に浸かれば5時間走り続けた疲れや気温5℃の寒さは吹き飛んだ。レースが目的ではなく、この温泉に浸かるために走ってきたようなものだ。まさに最高の贅沢。

温泉の後は食堂でお弁当をいただく。ちょっと多目のチャーハンらしきお弁当だったが、熱々のお味噌汁と一緒に食べ始めると、不思議なくらい食欲が沸いてきた。食べ終わるとほとんど待ち時間なしでスタート地点へ戻るバスに乗れた。これまでもがいてきたくねくねの山道をバスで引き返すため、かなり時間がかかった。きちんと確認したわけではないが、1時間はかかったと思う。

しかし、贅沢な温泉、行き届いたケア、あんぱんをまるまる一個食べられるエイドステーションなどなど。朝の開会式で「この大会は東京オリンピックを記念して開催された」と述べられていたが、今回が42回目。確かに長く続く大会の要素はたっぷり含まれた実に楽しいレースだった。