2005年2月13日 出水ツルマラソン

左右が開けたツルの飛来地。しかし今年はもう戻ってしまったそうです。

干潟を渡る橋。前半のアップダウン後は、ほぼ平坦。走りやすいコース。

 

鹿児島空港からバスで1時間半。または、JR鹿児島中央駅から九州新幹線で30分の出水駅から徒歩約20分の出水市陸上競技場がスタート・フィニッシュ。始めは出水の街中を走り、中盤はアップダウンを繰り返す郊外、後半は本大会の目玉であるツルの飛来地を巡る周回コース(一部重複する道あり)。

2月11~13日の3連休を使ってゆっくり鹿児島巡りを行う予定が、仕事の関係で土日だけの参加になってしまった。それでもレース前日は早朝の飛行機で鹿児島入りし、バスで垂水温泉へ、垂水港から船で鹿児島へ、鹿児島から新幹線で出水へと、およそ考えうる交通手段をすべて経験するあわただしさ。しかし、垂水温泉では先客ゼロ。大浴場を独占してしまったこと。船から念願の桜島を眺めることができたことなど、短時間ながらも濃厚な鹿児島観光をしてしまった。今思えば、このあわただしさが1年前に痛めた腰に微妙に影響してしまったようだ。

さて、出水陸上競技場で前日受付した私は、生まれて始めての経験をしてしまった。
なんと遠来賞をもらってしまったのである。地鶏のレトルトだった。
何しろ私の住む神奈川県私は、お隣の東京・埼玉と併せてマラソン人口のボリュームゾーン。日本全国どこのレースにいってもこの地域のランナーがうじゃうじゃしていた。しかも本州の真ん中に位置することもあり、遠来賞と言えば、北のレースなら沖縄のランナーに、南のレースなら北海道のランナーに与えられるものと信じていた。確かに首都圏から鹿児島県のマラソンに参加するランナーは、まず指宿やヨロンを選び、わざわざ出水ツルマラソンを選択するランナーは少ないかもしれない(失礼!)。そんなこんなで、今後二度と貰えないであろう遠来賞をいただいたのだが、この地鶏のレトルトが結構重い。一般の参加賞として貰った漬物とあわせると、背中の荷物が2倍の重さになったように感じたものだ。

さてレース当日。宿泊した出水駅近くのホテルでは、ランナーへの配慮から通常より30分繰り上げて6時から朝食を摂らせていただいた。しかも荷物も預かってくれるといううれしさ。重かった地鶏のレトルトと漬物をフロントに預け、競技場へ向かう。

しかし、寒い。
鹿児島県という響きから、沖縄並の暖かさを勝手に期待していたのだが、この寒さは最近の良いときにしかレースに参加していない私にとって、久々の試練であった。更衣室である体育館の2階の観戦席も、スリッパを履かないと足の裏が痛いほど冷たい。とにかくスタート30分前までは室内に粘っていたが、意を決して競技場へ向かう。見ればゴミ袋をかぶっているランナーもいる。ああ、そんな作戦もあったなあ、と素人のような感想を持つほど、寒い中のレースとはご無沙汰だった。

走り出してしばらくすると、もちろん寒さは和らぐ。体温が上昇しない分、脚は軽い。15kmを過ぎアップダウンが続く道で1枚写真を撮ろうとデジカメを出して驚いた。何と電池切れの表示が出ていたのだ。確かに出発前に充電はしていなかったとは言え、そんなに早く電池が切れるものか?

せっかく鹿児島まで来たのに、ツルの写真は撮れないのだろうか?
ひょっとしたら、写真を撮るためにもう一度鹿児島県に来なくてはならないのだろうか?
ちょっと待てよ。
このリチウムイオン電池は気温が低いとうまく作動しないのではないか?
大昔に読んだマニュアルにそんなことが書いてあったような気がする。
どうしたらよいのだろうか?
そうだ!電池を手で握り締めて走ればいい!
電池を軍手の中に入れて、今から「ツルのポイント」まで暖めよう!
「ツルのポイント」まで行ったら、一発勝負だ!
それでも写真が撮れなかったら、、、
いや!一発勝負は得意だ!(根拠なし)
きっと写真は撮れるはずだっ!

と、電池を堅く握り締めて、そのことだけを考えながら走ったため、逆に25kmを過ぎ、いつもは脚が重くなる30km近くになっても体調は変わらない。改めて肉体は精神に支配されていることを実感。

しかし、結果としてツルの写真は撮れなかった。
飛来地に近づくと、それらしい泣き声は聞こえるものの、2羽3羽飛んでいる姿がときどき見える程度。いよいよここが「ツルのポイント」か、と期待した開けた田んぼ道でも、残念ながらツルに驚くことはできなかった。それでも、再び陸上競技場に近づくと多くの声援。1年前に腰を痛め、復帰後のレースは終盤まできっちり走れたレースはなかったのだが、今日は珍しく最後まで気分よく走ることができた。

フィニッシュ後は急いで着替え、とにかく無料でいただけるソバとオニギリを頬張った。その後、会場から3kmほど離れた温泉まで歩き、どっぷりと温まる。ああ。この瞬間のために朝から寒い中を走り続けていたのだ。と幸福感に浸れる瞬間。
走りやすいコースといい、充実した給水所といい、適度な参加人数といい、申し分の無いレースでした。

出水駅近くのホテルに戻り、荷物を受け取る。駅前から空港行きのバスで1時間半揺られ、再び飛行機で1時間強。羽田からバスで40分。
そうしているうちに、だんだん腰が重くなってきた。
1週間たっても、1年前の腰痛の治りかけのような状態が続いている。
ああ、寒い季節はあまり走らないほうがよいのかも知れない。