2008年7月20日 おんたけウルトラトレイル100km
全コースを通じて、唯一ほっとできる三浦貯水池沿いの道
たぶん60km付近。珍しくずっと先まで見晴らせる道。
JR木曾福島駅からバスで約30分の王滝村小中学校をスタート。御嶽山ふもとの林道を周回し、小中学校から少し離れた松原スポーツ公園がゴール。スタート直後とゴールまぎわのやく10kmは舗装路だが、残りはすべて未舗装の林道という超ハードなウルトラマラソン。
今年の3月に右ふとももを故障して、この春のウルトラシーズンは悶々とした日々を送らざるを得なかったのだが、ようやくと走れるようになってきた。さすがに5分/km切る走りは怖くてできなくなったが、最近の月例マラソンは10kmを53分ほどで走れるまでに復活している。こうなると、せっかくだから春のうちに一回100kmを走りたいという気持ちが沸いてきた。
当初は7月上旬の磐梯高原100kmを考えていたのだが、申込が間に合わず。ああ、100kmは秋までお預けかなあ、とインターネットをたたいていると、目に飛び込んできたのがこのレース。「100km」という文字につられて申し込んでしまったのだが、後からレース内容を読んで、これはしまったと後悔。前述のようにコースはほぼオフロード。しかもスタートは0時。制限時間は20時というから、かなり厳しいコースなのではないかといやな予感。
その予感はスタート後、はやくも的中した。
王滝村小中学校をスタートするとすぐに上り坂。約4kmでオフロードに入ると、大きな石がごろごろする林道。この手の道は最も苦手なのだが、おまけに真っ暗な中、懐中電灯を頼りに進むのだが、予想どおりにあっという間に周りのランナーに置いていかれてしまった。
このレースはOSJが開催しているOSJトレイルレースシリーズの第3戦。OSJは「Outdoor Sports Japan」の略で、最近ランナーズ等の雑誌でよく目にするようになった「トレイルレース」の中心となっている組織らしい。参加者もトレイルランに慣れているようで、真っ暗な足場の悪い道を、不思議なくらいスムーズに走っていく。後で同じ宿のランナーの話しを聞くと、かの有名な「ハセツネ」などの山岳レースに参加している猛者ばかり。私のように「100km」というワードに惹かれて間違って参加してしまったランナーは皆無のようだ。このトレイルラン。知る人ぞ知る、ランニングの一大ジャンルを築いたようだ。
この夜は計ったような満月。
夜走るときは月の明るさがありがたい。しかしこのレースはそんな風情を味わう余裕などなかった。0時スタートのこのレースの関門は、33kmが6時間、65kmが12時間、80kmが15時間。レース前は全く気にしなかったが、レースが進むにつれてこの関門がプレッシャーになってきた。まずは33kmの6時間。スタート後4時間を過ぎると空が白んできたが、関門はまだまだ先。こんなところで足きりされてしまったらどうしよう。スタート後6時間と言っても世間は朝の6時。今晩は王滝村に宿を取っているので、夜までの間はどうやって時間をつぶそうか?御嶽山でものぼろうか?
そんな不安と闘いながら、何とか第一関門をクリア。私の後ろには数えるほどのランナーしか残っていないようだが、不思議なことにこのエイドで10名ほどのランナーが毛布にくるまって寝ているではないか。後でうわさに聞くところでは、この第一関門ですでに70名のランナーがリタイヤしているとのこと。真偽のほどは主催者の公式発表を待ちたいが、そんなうわさが駆け巡るほど厳しいレースであったことは事実である。
あたりが明るくなると走りやすくはなったが、7時半を過ぎたあたりで雲が切れて強烈な日差し。ついに恐れていた猛烈な暑さの始まりである。思えば昨日、王滝村も30℃を越えていた。レース当日はもっと暑くなるとの予報。65kmの第二関門で向かうランナーの頭上に意地悪な太陽が容赦なく降り注ぐ。このレースのエイドは6ヶ所。しかもそのほとんどは水しか置いていない。「天然エイドステーション」と銘打った沢の湧き水を頼りに這うように関門を目指す。コースには果てしなく続く上り坂が多い。パンフレットの高低図を見ると降りた分だけ登れば済むはずだが、どう考えても登りの方が長い。5km進むのに1時間近く掛かっている。この分だと65km12時間はぎりぎりか。
と思っていると第二関門が突然現れた。まだ63kmほどだと思うが、とにかく第三関門に進む権利は得られた。安心して冷やしそうめん(そば?)をいただく。このレースでいただいた食事といえば第一関門のくるみパンとこのそうめんだけ。アンパンを持ってきて本当によかったと実感。スタート時にこのエイド行きの荷物を預けることができる。いつものようにカフェオレと追加の食事を入手して、次なる関門、80km15時間を目指す。
この間はいままで以上の上り坂。果てしない登りが続く。登りは歩きと決めていたが、この間は半分以上歩いている。次のカーブの先は上りか、はたまた下りか?しかし、下りになったからといって安心はできない。何しろ私は登りより下りのほうか苦手だ。だが不思議なことにここまで山道を走り続けていると、砂利の少ない走りやすいルートが目に飛び込んでくるのだ。ここを走れば走りやすい。というイメージが瞬間的に頭に飛び込んでくる。おお、ついにトレイルランの極意をつかんだかっ!と悦に入っているととたんに悪路に突っ込んでしまう。どうも集中力の持続性が必要なようだ。
80kmの予定の第三関門だが、これも3kmほど手前にあったようだ。
80kmの15時間が最も難関だと思っていたので、これをクリアできたことは大いなる自信につながった。あと20kmを5時間で走ればよい。完走は約束されたようなもの。と思ったとたんに、これまでの中で最も急勾配の上り坂が出現。こんなはずではなかったと再びのあえぎ。そしてついに最後の92kmエイドへ向かう下りが始まった。これまでじりじりと登ってきた山を一気に下る。
このレースの最後のサービスは、実は100kmに満たないこと。97.5kmが正式な距離とのこと。92kmエイドを過ぎると、懐かしい舗装路を一路松原スポーツ公園に向かう。舗装路は実に走りやすい。山道を走るといつも感じるが、平地を走り続けているときと違う筋肉が疲労するようだ。最後の平地舗装路はスピードは出せなかったものの、快適に脚が進む。深夜0時にスタートして実に17時間40分。長い長い旅が終わった。
王滝村のバス停がある観光案内所(スタートの小中学校のすぐ近く)から松原スポーツ公園までは、前日・当日ともにシャトルバスが出ている。また観光案内所に各宿から迎えに来てくれるので、脚には苦労しない心配り。悩んだのがスタート前にどこで時間をつぶすかだ。レース後に宿泊する宿に荷物を預けて、観光案内所のとなりの体育館で仮眠を取った。このパターンのランナーは私以外にも何人かいたが、素直に宿で「半泊」する人のほうが主流だったようだ。
このレースは今回が第一回。
正直、エイドは品薄だったが、これは第一回のため段取りが悪かったというよりはOSJのスタンスなのだろう。レースだけ取り出せばコースの厳しさ、単調といえば単調のコース設定、エイドの少なさなどマイナス点が多いが、これもこのレースの特徴と割り切ればよいのかもしれない。それよりも町をあげてランナーをバックアップしてくれる体制は感謝感謝。
今回大きかったのが、今後ウルトラを走れるという自信がついたこと。本調子ではない中で17時間以上前に進み続けられたのがうれしかった。
とはいえ、厳しく暑いこのレース。
果たして来年以降も参加するかと問われれば、、、どうしようか?