2006年11月23日 第19回大田原マラソン
美原公園陸上競技場のフィニッシュライン
JR那須塩原駅または西那須野駅からの無料バスで20分ほどの美原公園陸上競技場がスタート・ゴール。1周20kmのほぼ平坦なコースを2周する制限時間4時間のレース。1991年9月15日 田沢湖マラソン
フルマラソンを初めて走ったときには、まさか47都道府県を回ろうなどという気持ちが沸いてくるとは思っていなかった。

1998年11月。
同じ月に大阪淀川市民マラソン(大阪府)と尼崎シティ国際マラソン(兵庫県)の2つのフルマラソンを走ったころから、日本全国を回りたいという気持ちが沸いてきた。

2005年11月27日 瀬戸内海タートルフルマラソン
このレースをクリアして、いよいよあと1県ということになったのだが、2004年ごろから最後のレースはどこにしようかと、ぼんやりとではあるが考え続けていたのは確かだ。鹿児島県のヨロンマラソンでロングバケーションを取ってゆっくり走ろうか。ほぼそれが第一候補になっていたのだが、どうも自分らしさがないように思える。それでは自分らしさとはなにか。やはり、がむしゃらに走っていた、苦しんでいた、あの走りをもう一度体験したい。どきどきしながらスタートラインに立つ。そんな走りをもう一度思い出してみたい。そんな気持ちで選んだのが、この大田原マラソンだった。そしてその目的は十分に達成することができたのだ。

3週間前の柏崎マラソンでガソ欠を起こし、スタミナの不安をかかえただけでなく、最近の低気温のせいか、左ふくらはぎがしくしくと痛み始めた。いろいろな不安が交錯。ましてやこのレースは4時間制限。去年の今頃、結構体調が良いと思っていたころでも3時間50分を切るのがやっとだったのに、今年は7月のふくらはぎ痛以来走りこみも不足している。はたして時間内完走できるのだろうか?久々に、実に久々にレース前日からどきどきしてきた。開き直ってこの状態を楽しむことにしようか。

前泊した那須塩原駅やこの競技場周辺は実に何もなく食糧調達できなかったが、ホテルの朝食をしっかり摂り、会場内の出店でコロッケパンをほおばり、なおかつ初めてスペシャルエイドにドリンクを置くことにした。柏崎でのガソ欠を教訓に30kmにミルクティーを、35kmにスポーツボリンクを預け、できるだけの対策を施した。競技場の体育館内で受付。近くの室内に荷物を置くことができる。コインロッカーに預けることもできるようだ。

しかしアップを始めた途端に、ふくらはぎがしくしくと痛む。この痛みは走り出したら治まるのか、それとも益々痛みが強くなるのか?不安を抱えてのスタート。幸いうまく走り出せ、痛みはやわらいでいった。5km。10km。好天だが、走るには適度な気温に下がった中、順調にラップを刻む。ほぼ平坦。ゆるやかな坂もあるがほとんど気にならない。ゼネラルエイドにはスポーツドリンクがアルミボトルごと置かれていた。コンクな糖分を定期的に摂ることができたため、スタート前の不安をよそに快調な走りを続けることができたが、15.4kmの第1関門通過タイムは脚切り時間にわずか8分しか余裕を残していなかった。これが4時間制限レースの厳しさ。

1周目が終わり20km。
脚の痛みは出ず、ガソ欠の兆候はない。しかしこのままレースを終えることができるかは勿論わからない。タイム的にも1秒の余裕も持てず、めいっぱいの走りが続く。25km。そして柏崎で大失速した30km。ガソ欠までは行かないが、さすがに疲れを感じてきた。30kmエイドで初めてのスペシャルドリンクを摂る。いつもウルトラのレストステーションに預けているミルクティーだ。そしてこれが大正解。体のけだるさは一気に解消。気分もすっきりしてきた。

とはいえまだ残りは10km以上ある。
35.4kmの関門は3時間20分。とにかくそこを超えよう。超えるまではペースを上げすぎないように。残り10kmを甘く見ないように。精神的に慢心しそうになるところをしっかりひきしめながら走る。このままゴールまでいけるだろうか?

脚の痛みよ、出ないでくれ。
ガソ欠よ、起こらないでくれ。
最後までちゃんと走るから。
恥ずかしい走りはしないから。

35kmの関門も8分ほどの余裕で通過。
しかし、この時間帯になるとゼネラスエイドにスポーツドリンクは残っておらず、水のみ。幸い預けてあったスポーツドリンクを飲み干す。30kmで飲んだミルクティーの効力が切れ始めたときだけに、35kmのスペシャルドリンクはこれまた大正解だった。あと7km。自然にスピードは落ちていく。フルマラソン特有の脚の疲れ。ウルトラでは歩きを入れられるところを走らなければならない。それどころか4時間以内にゴールするためには気を抜くことはできない。

あと5km。あと4km。あと3km。
以前なら一気にゴールまで突っ走るところだが、そんな余裕はない。かといって楽な走りに切り替えることもできない。ここまできたら、いままで走った46都道府県のことを思い出すかな、と思っていたが、そんな情緒は微塵にもない。

競技場が見えてきた。
フィニッシュラインが見えてきた。
自己新を更新するわけでもない。初めての距離を完走できたわけでもない。
これまで何度となく走ったフルマラソンという「平凡な」レースをしただけだ。
でも、久しぶりにどきどきを感じている。
47都道府県制覇。その最後のレースを大田原にしてよかった。
左ふくらはぎの故障は、このどきどきを演出するためにおてんとうさまがくれたものだったのだ。

レース後競技場の出店で、無料なめこ汁と200円のおでんをいただく。おでんはボリュームたっぷりで、これはお勧め。会場から那須塩原駅と西那須野駅に無料バスが出ているが、それをパスして無料温泉券を活用することを選んだ。会場から徒歩30分ほどのパインズ温泉で汗を流す。今日はそれほど寒くはなかったが、疲れた体を癒すには温泉が一番だ。

さて那須塩原駅まで行こうかと思ったとき、初めて知った。今日は祝日のため、駅へのバスがもう無くなってしまったとのこと。しかたがないのでタクシーで駅へ向かったが、タクシー代は2600円。温泉が700円なので、はたしてどちらを選んだほうが得なのか?
走り始めたときの感覚を思い出させてくれる楽しい大田原マラソン。毎年来てしまいそうな気がする。それだけに来年までに温泉か無料バスかの答えを出さなければならない。新たな(?)課題を与えてくれた大田原マラソン。