2011年5月2~4日 萩往還250km

瑠璃光寺でスタートを待つ。いよいよ祭りが始まるのだ。

板堂坂へ向かう最後の登り坂。感動を味わう暇もなく、今日も時間との闘いだった。

 

思えば2000年、70kmの部で帰りの佐々並でリタイヤしてしまったことが萩との出会いだった。
70kmは2002年にリベンジを果たし、次は250kmだっ!と気合を入れたものの、GWは故障だったり、仕事だったりでなかなか出走できず。そうこうしているうちに、「250kmを走る前に140kmを走ること」という制度ができてしまった。2009年に140kmを完走。2010年は満を持しての250km出走も、青海島の手前でふくらはぎ痛が激しくなり、150km地点でリタイヤ。5月4日早朝に宗頭から瑠璃光寺までバスで送られる中、どうして脚を引きずってでも前に進まなかったのかと、これまでに経験したことのない悔しさがこみ上げてきた。何としてでも来年は完走してやる。

そして2011年。
1月2月と結構まじめに走りこみ、体を作っていったのだが3月6日に久々のふくらはぎ痛。大事をとって他のレースへの参加を見送り、結局はぶっつけで萩に臨むことになってしまった。同じレースを2回続けてリタイヤすることは許されない。と自分で自分に妙なプレッシャーをかけてしまったため、5月2日は朝から緊張しっぱなし。もう20年もレースに参加し続けてきたのに、スタート前にこんなに緊張するのは実に久しぶり。ある意味では幸せな「人生」といえるのだろう。

5月2日18:00。瑠璃光寺をスタート。
昨年は80kmの新大坊まではあっという間にたどりついたという印象だったが、今年はその間が妙に苦しい。不思議なもので同じレースを2回走ると、1回目が楽だったところが2回目は苦しく、逆に辛かったところが楽に感じることがよくある。昨年もうリタイヤしようと思い続けた川尻岬への登りは、結構気力充実。その代わりに昨年楽に行けた千畳敷の登りは、今年は地獄の様相。

そんなことを繰り返しているうちに昨年リタイヤした青海島に上陸。鯨墓までの往復はちょうど暗くなってきたことと、車が結構多かったことで、大変走りづらい。昨年この島でリタイヤしていなかったら、「ここで頑張らなければいかん!」と、前向きにはなれなかったかもしれない。これもケガの光明というのだろうか。

163.9kmの仙崎公園を越えると、そこからは未知の世界。
道もよくわからずに不安だったが、5~6人ほどの集団に引っ張ってもらい、何とか宗頭着。
さっと入浴して、2時まで横になる。ちょっとでも寝たら楽になるかなと思っていたが、2時に起きるとちょっと頭がいたい。このまま2度寝したらどんなに幸せだろう。という悪魔のささやきを振り切って再びコース上へ。意外と遠い藤井商店を越えて、鎖峠を越えて、眠気をこらえながら三見駅への下り坂を走る。

三見駅のちょっと手前で、2回目の朝を迎える。
1回目の朝はさわやかに走り続けられたのだが、2回目の朝は眠気がとれない。195kmの玉江駅までは半分眠りながら走っていたようだ。しかし、ここからは「勝手知ったる」萩の街だ。140kmランナーと合流したことも元気も元となり、眠気はどこかへいってしまった。虎ヶ崎、東光寺と淡々と距離を稼ぐ。萩の街に別れを告げて、正真正銘の萩往還へ向かったのは11時ちょいすぎだったろう。

制限時間まであと7時間。
残りは35kmほどなので楽勝だと思っていたのだが、ここからが辛かった。道の駅「萩往還公園」を過ぎて山道に入ると、一気に疲労がやってきた。坂を登るのに、両膝に手をあてがって補助してやらないと前に進まない。明木エイドを越えたところから始まる一升谷は、これまでの萩往還の中でも苦しいと思ったことはなかったのだが、今日は気が遠くなるほど厳しい。結局この坂を登り切るのに1時間を要してしまった。

最後のエイド・佐々並に到着したのは15時。残り3時間。
不思議なもので、時間との闘いになると結構走れるものだ。周りのランナーからちぎれてしまうと気力がなえてしまう危険性があるので、我ながら結構がんばって走る。あとは最後の板堂坂を残すのみ。実は2010年のリタイヤから、ずっと続けてきたイメージトレーニングがあった。それはこの板堂坂を登っている自分の姿を思い浮かべることだった。ここまでくれば完走できる。2000年からずっと気持ちの中にあった萩往還。それがこの板堂坂を越えると完結するのだ。喜びをかみしめ、涙を浮かべながら前進する私。

しかし現実はそんな感動的ではなかった。
残り時間はじりじりと減り、登り坂はまだ終わらない。
板堂峠を越えるとオフロードの急な下り坂。気持ちはあせるが、こんなところで転倒したら大変だ。慎重に歩を進め、ついに錦鶏湖のオンロード下り坂に出た。ここから3kmちょいはひたすら走る。最後の坂はいつも走っている印象がある。時計を見ながら、足元を見ながら、ちらちらと見えだした山口の街を見ながら、不思議なくらいスピードに乗っている。瑠璃光寺へ向けて最後のT字路を右に折れる。2000年からいつも気持ちの中にあった、長い長い山口の旅が今終わろうとしている。

5月2日
18:00 瑠璃光寺        (0km)
19:41 上郷駅前        (13.2km)
20:49 湯ノ口          (21.8km)
21:39 下郷駐輪場       (27.8km)
22:16 美祢高校前       (32.0km)

5月3日
0:04 西寺交差点       (44.0km)
2:22 豊田湖畔        (58.7km)
3:50 俵山温泉        (67.1km)
5:53 新大坊          (80.1km)
7:08 海湧食堂        (87.2km)
9:00 俵島           (98.5km)
10:37 川尻岬          (107.8km)
12:28 立石観音        (117.7km)
14:27 千畳敷          (125.4km)
15:31 黄波戸口        (131.1km)
17:48 仙崎公園        (143.3km)
19:43 鯨墓           (153.8km)
22:00 仙崎公園        (163.9km)

5月4日
0:20 宗頭文化センター着 (175.7km)
2:00 宗頭発
2:58 藤井商店        (179.0km)
5:10 三見駅          (188.1km)
9:00 虎ケ崎          (206.9km)
10:42 東光寺          (215.2km)
12:03 道の駅萩往還公園  (222.2km)
12:55 明木           (225.9km)
15:00 佐々並          (235.7km)
17:45 瑠璃光寺        (250.0km)