2006年4月23日 16thチャレンジ富士五湖 100kmの部
山中湖。正面の富士山は残念ながら傘をかぶり、全貌を現すことはなかった。
河口湖。今まさに桜が満開!
「富士吉田火祭りマラソン」の会場でもある富士北麓公園をスタート。まず山中湖を回り河口湖→西湖→精進湖を経由し、本栖湖がチラッと見える69km地点で折り返し。精進湖をショートカットして西湖→河口湖を経由、最後は再び富士北麓公園までもどるが、最後のだらだらした登り坂が何とも苦し楽しいコース。
本大会は16回目。16年前の第一回大会は1991年で、私が初めてマラソン大会に出場した翌年にあたる。当時は参加者13名で、距離は107km。「ランナーズ」の報告記事を読んで、何とも変な人々がいるものだなあと、それほど大きな関心を持たなかったというのが正直な感想。その後、私自身もウルトラにのめりこみ、変な人々の仲間入りを果たしたのだが、全国各地で100kmレースを走って来たわりには、相模原在住の私にとって超近場のこのレースに参加する気持ちは全く湧いてこなかった。
私の癖として近場のレースは後回しにする傾向があること、富士五湖周辺の他レースにちょこちょこと参戦しており、ぜひ富士五湖に行きたい!という気持ちが持てなかったこと、などなどいろいろな理由があるが、一番大きかったのは第一回大会が13名で行われたことから、極めて小規模のレースである印象が強く残っていたことである。
しかしウルトラレースに参加する旅先で「富士五湖」の話を聞いていると、小規模レースというのは私の単なる先入観で、1998年からコンスタントに参加者1000名を越える大レースに成長していたのだ。今年の上半期の目標レースは富士登山競走。今回は真面目に取り組もうと考えており、6~7月の週末は現地トレーニングに充てたい。となると、6~7月のウルトラには参加できないことになり、それはそれで何とももったいない。ウルトラも富士登山も両立できる妙案はないだろうか?などと思案しているうちに、4月23日に開催されるこのレースがクローズアップされてきた。いろんな意味で、今年がこのレースに参加する最高によいチャンスになったのである。
近場とはいえ、朝5時スタートのウルトラレース。前泊は必要である。私が泊まったのは河口湖畔の宿。朝3:45に会場までバス輸送してくれ、しかも朝食は2:30からちゃんとした定食を用意してくれた。小規模なレースだと、宿側もここまでの対応はしてくれないので、このことからもこのレースが地元にしっかり定着していることを感じる。
富士五湖の朝は寒い。そこでこのレースでは、スタート時にはウインドブレーカーを着用し、30km地点で脱ぎ捨て可能というシステムになっている。「寒い」という事前情報を得ていた私は、上はウインドブレーカー、下はジャージという完全防備でスタートしたが、結果として失敗。雨の予報が外れたこの日はそれほど気温が下がらず、15km先の山中湖に着く手前で既に両方とも脱いで腰に巻きつけながら走るという不恰好なランナーになっていた。
しかし、スタートしてからどうにも体が重い。
始めは上下余計なものを着ているからかと思ったが、脱いでも心地よくならない。25kmを通過したときには、今日は50kmまで行けないのではないか、と思ったくらいである。思えば3月末に伊豆大島を走り、4月始めは海外出張。その海外出張先でジョギング中捻挫してしまい、帰国後も年度始めのがたがたが続いたことから、確かにこの1ヶ月まともに走っていない。今日はいったいどうなってしまうのだろうか?
富士吉田と山中湖との間のコースはいろいろなレースで走ったことがある。前述の1991年初レースは山中湖ロードレース。本大会と同じ富士北麓公園が会場である富士吉田火祭りロードレースには2回ほど出場したことがある。富士登山競争とそのトレーニングでは何度このあたりに脚を運んだことか。また、富士吉田~山中湖間はひとりふらふらとマラニックしたこともある。そんなわけで前半の山中湖往復はこれまで頭の中にあった景色を再確認するだけだった。そんな気分的なアンニュイ感に加えて天気もスカッとせず、体も重い。これまでの100kmマラソンの前半の爽快さとは正反対の気分と体調。よく知ったコースでウルトラを走るのも考え物だなあ。
などと思いながら走っているうちに、コースは40kmを過ぎて河口湖へ。もちろん河口湖も「河口湖マラソン」に参加したことがあり、よく知った景色ではあるのだが、今回のレースは桜が満開であるところが大違い。この桜のおかげで気分はがらっと一新。走り始めの憂鬱感は消え、川柳をひねりながらの余裕のある走りに変わった。現金なものだ。あまりにも桜がきれいだと言って、頻繁に脚を止めていると、そのうちに桜前線が通り過ぎて桜が散っちゃうよ。というようなことを五七五に収めようと頭をひねるものの、なかなかまとまらない。
花休み いつしか桜に 追い越され
桜(はな)前線 ゆっくり行こうぜ お互いに
相変わらず才能は無いようである。
河口湖から西湖へ向かう峠越えが中間エイドステーション(51km)。
コースが西湖に入ると、景色が一変。とにかく何も無い。この西湖は10年以上前にsaikoロードレースで走ったことがある。そのときも何も無いけど、山中湖や河口湖とは違った良い湖だなあという印象を持っていた。今回改めて西湖を走り、何もないけどそれが西湖の魅力だと再認識。
西湖から精進湖へ。
精進湖と本栖湖は私にとって未知の世界。実はこのレースを走る前に一番楽しみにしていたのが精進湖だった。西湖より閑静な、こじんまりとした美しい湖を期待していたのだ。しかし、残念ながら期待を裏切られてしまった。それほど大きくない精進湖の湖面には、釣客のボートがところ狭しと並んでいた。雑然とした湖というのが精進湖の印象になってしまった。
精進湖から本栖湖へ。100kmの部は本栖湖の畔で折り返すので、正確には湖はほとんどに見えないが、ここのエイドでもう一度気分転換。これから北麓公園へ戻ると思うと、不思議と気分は楽になる。走りも楽になるが、残りはまだ30kmある。最近はあと10kmというところで思うように走れなくなるというレースを繰り返している。慎重に慎重に走りを続ける。本栖湖から精進湖をショートカットして西湖へ。峠を越えて河口湖へ下る。
河口湖へ下った勢いで、そのまま富士吉田まで行けるのではないかとも思ったが、100kmレースはそんなに甘くない。しかもこのレースの最大の難所は最後5km以上続く登り坂。その話はいろんな人から聞いて知っており、その登りは富士吉田火祭りマラソンの最後の数kmと同じ坂だろうと思い込んでいた。しかしこれが落とし穴。火祭りの坂をはるかに越えるだらだら坂だった。
夕方5時を過ぎた登り坂。走ることはできないので、だんだんと寒くなってきた。朝つけていた軍手を捨てないでよかった。あそこまでいけばあとは下り。と、まわりのランナーが教えてくれる。同じコースを走ったという共感から、みんなで一丸となってゴールを目指している。なにも最後にこんなコースを用意しなくてもいいじゃないか、と思っていたが、この苦しさがあるからこそ、ランナーの間に不思議な連帯感が生まれている。そこまで考えて作られたコースだとしたら、実にウルトラ心を知り尽くした主催者といえる。
フィニッシュ後は荷物を受け取り、競技場内の温水シャワーへ飛び込む。混んではいたが、順番待ちの間の会話も楽しい。
着替えて外に出ると雨が降り始めていた。
ここからはバスで各ホテルや富士吉田駅を巡回するバスを用意してくれている。明日も朝から仕事が待っている年度初め。これから3時間ほどかけて家まで戻らなければならない。ああ、近場のウルトラと言えども、走った後はゆっくりと後泊すべきである。それがウルトラの基本。