2005年12月29~31日 鳩間島を走る
桟橋から灯台を見上げる。
島仲浜から集落へ向かう道から灯台を望む。
島一周道路。こんな道が延々と続く。
本格的に「島巡り」を意識してトカラ列島を走ったのは今年のゴールデンウイークのこと。そして、ちょうどその時期に離島を舞台とした連ドラ「瑠璃の島」が放映されていたのだが、離島興味が高まっていたときだったので、ついつい見入ってしまった。このドラマは、八重山諸島の鳩間島をモデルとした「鳩海島」を舞台としたもので、ストーリーも面白かったが、何よりも「鳩海島」の美しさにはまってしまった。というわけで、今回八重山を走るにあたり、第一に訪問先を決めたのがこの鳩間島だった。というよりも、鳩間島を走るついでに他の八重山諸島も走るといったほうが正確かもしれない。
12月28日20時に石垣港出航、29日7時石垣港着。そしてそのまま9時30分発の鳩間島行フェリーに乗り込んだ。「かりゆし」というこの船はすごいのひとこと。何しろ客室というものがない。デッキで潮風に吹かれながら、と言えば聞こえがよいが、デッキにいるしかないし、いやでも潮風を受けざるを得ない。朝、石垣港についたときからぱらついていた雨はやむことなく、デッキにいる私にふりつけてくる。最初は風情があるのう、と楽しんでいたが、乗船時間は実に2時間。最後は何とか雨がしのげるスペースでひざをかかえて鳩間島到着を待ち焦がれていた。
鳩間島港に近づくと、海の色が明らかに変わった。間違って絵の具を流してしまったほどのエメラルドグリーンだ。ドラマ「瑠璃の島」の主題歌の一節に、「空の色映し出した瑠璃色の海」というフレーズがあったが、良い意味で間違っている。何しろ、雨が降り続ける曇天の下でも十分瑠璃色の海を楽しむことができるのだ。
鳩間港接岸はちょうどお昼。ドラマで見慣れた桟橋から宿へ向かうが、想像以上に集落が小さく、あっという間に宿についてしまった。何しろこの鳩間島は周囲3.9km、人口約60人という超小型の島なのだ。売店も1軒しかなく、食事は宿でとる他ない。もちろんお昼も宿でいただくことになるので、到着早々沖縄そばを食べさせてくれた。
そばをいただきながら、外を眺めるが、雨は一向にやむ気配がない。まあ雨男の私としては、この程度の雨恐るるにたらず、ということで着替えをすませて走り出した。舗装路は少なく、集落を離れると未舗装路が続く。しかも道には雑草が茂っており、走りにくいところも結構ある。それでも島一周道路(ほとんど未舗装)は走るのに苦になることはなく、展望の利かない道は静かな雰囲気を、展望の開けた道は海を楽しみながら走る。
ドラマが放映されてから、特に夏場は観光客が増えたとのことで、島一周道路から主な海岸へ出る道にはちゃんと表示が出ている。もちろん全部の海岸に出てみたが、その中ではドラマを象徴するシーンのロケ地となった屋良浜が美しかった。やはり撮影陣はさすがプロ。押さえるところはきちんと押さえている、と妙に感心。
29日30日と島の主だった道を走りまわり、シャワーを浴び、昼寝をし、ご飯をいただいて夜寝する。そんな贅沢な島時間を過ごしていたが、残念ながら雨はやまない。しかし、31日お昼の船で石垣に戻ろうと荷物をまとめていると、突然太陽が顔を出し始めた。鳩間に来て始めての好天。船に乗るまで2時間ほどあるので、急いでデジカメを取り出して集落中心に歩き回る。雨が降っていても美しかった海は、当然のごとくそのあでやかさを増し、空の青と、山の緑のマッチングも絶妙のシャッターチャンスを与えてくれる。しかしどんなにあがいても、この島の奇跡的な美しさは人工の小さなファインダーには収まらない。もう写真は諦めて、この景色を眼に焼き付けることに専念しよう。いつかまた、この美しい海にとっぷりと浸かり、さらにさらに贅沢な島時間を堪能できる日を想像しながら。