2006年1月4日 波照間島を走る

日本最南端のジョギングコース?

サトウキビ畑を延々と続く島一周道路。

南の海に落ち込まんばかりの道。この先はフィリピン!

 

12月29日から1月7日に渡る八重山の旅は、曇りから雨の天候が多かった。
その中で2日間だけ、スカっと晴れ渡り、暑さすら感じる日があった。それが12月31日と1月4日だ。31日は鳩間島から石垣に渡ったときで、この時期欠航しがちな鳩間-石垣航路に何の心配もいらないほどの好天。石垣に着いてからも走る予定がなかったので、大晦日の活気あふれる商店街を散策したのだが、これが暑い。Tシャツ姿が何の違和感も感じられない日だった。

そしてもう1日の1月4日は、西表の船浦港から石垣へ渡り、そこで船を乗り換えて波照間へ向かう予定の日だった。果たして船は予定通りに運航されるか?石垣まで行けたとしても、波照間便にちゃんと乗り継げるのだろうか? などなど、この旅の中で一番心配していた日だったが、この不安を一掃してくれる見事な快晴。船はほとんど揺れずに一路波照間を目指す。曇天でも美しい海は、好天の下ますます蒼く、観光船ではない普通の定期航路船であっても、十分八重山を堪能できる船旅だった。

波照間はこの日から2泊の予定だったが、宿は食事無しの素泊まり。聞けば昨日まではきちんと準備されていたそうだが、三箇日が終わったところで宿泊側が一息つきたいということなのだろうか?まあ、それはそれで良しとし、それならばここで食事を摂ろうと考えていた場所があった。身近なところだが、港の売店「イノー」だ。この日はちょうどお昼に波照間に到着したので、そのままイノーに駆け込み、沖縄そばをいただく。これが結構うまい。食べながらふと見ると、波照間のマップも販売していた。ガイドブックの地図では細かい道まで載っていないため、やや不安に思っていたところ。迷わず購入。

港から歩いて本日の宿へ。島中を走り回るのは明日を予定していたが、こんな好天が続く保証はない。宿に荷物を置くと、迷わず走り始めた。島一周道路をベースに、下田原城址やシムスケー(昔の井戸)の標識があれば、それに従ってわき道にも脚を踏み入れた。波照間は隆起サンゴでできた平坦な島。ほとんどアップダウンのない道の両側にサトウキビ畑が広がっている。そしてその先には青い青い海が続く。走りながら、そして景色を楽しみながら、急にわくわくしてきた。私がこれまで走った中で、ひょっとしたら一番いい場所なのではないか。

そんな気持ちは走るに従い強くなってきた。
ちょっとした鉄道の駅より小さい波照間空港から高那崎へ向かう道では、向こうから10頭ほどのヤギの集団がやってきた。どうどうと舗装路の真ん中を歩いているではないか。私とすれ違っても、逃げるでもなく、向かってくるでもなく、普通の通行人のようにすれ違う。

そして高那崎。
ほとんど期待していなかった場所だが、恐ろしく美しかった。波風が吹き寄せる断崖だが、白い岩と背丈の低い緑がまだらに入り混じっている。まだ行ったことはないが、写真でみる秋吉台の雰囲気といえば想像できるだろうか。しかしこちらはその先には青い海が広がっている。何とか写真を撮ろうとあれこれ考えてみたが、それが無駄であることがわかった。この眺めは人工のファインダーなんかに収めることはどだい無理である。それよりはこの眼にこの脚にしっかりときざみつけよう。

この岬から日本最南端の碑まで、未舗装路が続いている。日本最南端のジョギングコースを十分堪能し、再び島一周道路に戻る。相変わらず続くサトウキビ畑。自転車で回る観光客と抜きつ抜かれつ。いつしか港近くまで戻っていた。今日の最後は「北浜」。沖縄では「北」を「ニシ」という。ややこしい浜だなあ、というくらいにしか考えていなかったが、またしても衝撃を受けた。八重山に来てから美しい浜は見慣れてきたが、この浜は違う。コバルトグリーンと藍が入り混じった海。白い砂。そしてその砂を静かに洗う海水は真水のごとく澄み切っている。見れば何人かの先客。みんなボーっと海を眺めている。そう、この浜にl来たら、あれこれ動き回る必要はない。すべてを超越した存在。そんなことを考えさせられるニシ浜だった。

翌日。まだ暗い5時に空を見上げると美しい星が瞬いていた。
これはこの旅で初の日の出が拝めるのではないか。
と大いに期待していたが、7時に外にでると、風は強く、空は曇り、しかも雨がぱらついてきた。この日の天気予報は雨。しかも風が強く、波も高い。石垣に戻る予定は明日だが、明日万一欠航になると大変なことになる。まだまだゆっくりしたい島ではあったが、船が動いている今日のうちに石垣へ行こう。

波照間。恐ろしいほど美しく、魅力たっぷりの島。
たくさんの驚く体験をさせてもらったが、この日の波照間-石垣便は本当の意味で恐ろしかった。揺れるなんてものではない。波で持ち上げられた船体が海面に落とされ、殴られたような衝撃が走る。あまりの上下動に、頭を天上に打ち付けてしまった。ということは50cmほど私の体が浮いたということだろうか? それだけ揺れたら船酔いしてしまいそうだが、ある一線を越えて揺れると、船酔いしているどころではないようだ。片道3000円の船旅。これだけの揺れを1時間体験できてこの価格は、遊園地よりお得という見方もできる。

いろんな体験が詰まっていた波照間。
ぜひもう一度行きたい島である。